溶接業の見込み客管理をスプレッドシートで整える顧客台帳の作り方
溶接・製缶の会社へ新規営業をかけていると、名刺、FAX DMの返信、問い合わせフォームからの反応、テレアポのメモなど、情報があちこちに散らばりがちです。「この会社、先週も誰かが電話したのでは」「見積り依頼をもらったのに続きが分からない」といった事態は、多くの営業現場で起こり得ます。
こうした状態を整える最短の方法は、高価なツールを導入する前に、まず一枚のスプレッドシート(共有型の表計算)で顧客台帳をつくることです。表計算であれば追加費用がかからず、項目の追加や並べ替えも自由にできます。運用が定着してから専用のツールへ移行しても遅くありません。
この記事では、溶接業を営業対象とする場合を想定し、台帳の項目設計、進捗ステータスの決め方、重複や二重連絡を防ぐ仕組み、チームでの共有ルールまでを、そのまま真似できる形で整理します。
なぜ溶接業の営業では台帳づくりが効くのか
溶接業は、図面や仕様に基づいて受注生産を行うケースが多く、案件ごとに材質、板厚、溶接方法、納期などの条件が変わる傾向があります。そのため営業する側も、単に「社名と電話番号」を持っているだけでは不十分で、相手の得意分野や設備、繁忙の時期といった情報を紐づけておく価値が高くなります。
また、次のような事情も台帳管理を後押しします。
- 現場作業が中心で、社長や工場長が電話口に出られる時間帯が限られるケースがある
- 既存の元請や商社との取引が長く続いていることが多く、すぐの切り替えにはなりにくい傾向がある
- そのぶん「今は不要だが将来的に相談したい」という保留状態の見込み客が積み上がりやすい
つまり、一度の接触で決まりにくいぶん、接触履歴を残して適切な時期に再アプローチできるかどうかが成果を分けます。台帳はそのための記憶装置です。
台帳の項目設計:最初に決める列の一覧
項目は多すぎると入力されなくなり、少なすぎると再アプローチに使えません。最初は次の三層に分けて設計すると迷いにくくなります。
1. 基本情報(リストから転記する列)
- 管理ID(連番。重複チェックの軸になります)
- 会社名(正式名称)
- 会社名カナまたは検索用の簡略名
- 都道府県/市区町村
- 住所
- 電話番号
- FAX番号
- メールアドレスまたは問い合わせフォームURLの有無
- ホームページの有無
2. 溶接業ならではの属性(営業の切り口になる列)
- 主な加工内容(製缶、板金、配管、構造物、架台 など)
- 対応材質のメモ(鉄、ステンレス、アルミ など分かる範囲で)
- 溶接方法のメモ(アーク、半自動、TIG など公開情報の範囲で)
- 工場規模の印象(従業員数の目安、工場の有無)
- 取引先の傾向(建設向け、プラント向け、機械メーカー向け など)
- 自社商材との接点(例:溶接ヒューム対策、治具、検査機器、人材、システム など扱う商材に合わせて)
3. 営業活動の記録(運用で埋めていく列)
- 担当者(自社側の営業担当)
- 先方の窓口名・役職(分かった範囲で)
- ステータス(後述)
- 初回接触日/最終接触日
- 接触手段(FAX DM、メール、電話、フォーム、訪問)
- 次回アクションの内容
- 次回アクション予定日
- メモ(会話の要点、断り理由、繁忙期の情報など)
- 配信停止・連絡不可フラグ
最後の「配信停止・連絡不可フラグ」は必ず列として持ってください。DMやメールを送る場合は、関係法令やガイドラインを確認し、送信者情報や配信停止の方法を明記したうえで、停止の申し出があった先を確実に除外できる状態にしておく必要があります。
進捗ステータスの決め方
ステータスは細かくしすぎると入力者によってブレます。溶接業のように検討期間が長くなりやすい相手では、次のような六段階程度が扱いやすい構成です。
- 未接触:リストに入れただけの状態
- 接触済(反応なし):DM送付やコール実施、返答が得られていない
- 会話済(情報収集中):担当者と話せた。ニーズは未確認
- 関心あり:資料送付、見積り依頼、訪問アポなど次の動きがある
- 保留・時期待ち:今は不要だが再アプローチの余地がある
- 対象外:廃業、業種違い、連絡不可の申し出など
運用のコツは三つあります。
- ステータスは必ず選択式(プルダウン)にして、自由入力にしない
- 「保留・時期待ち」に入れるときは、再連絡の予定日を同時に入れることを必須にする
- 「対象外」は理由を短く残す。廃業と一時的な断りでは扱いが違うためです
特に溶接業では、繁忙期と閑散期の波があるケースがあります。会話のなかで「この時期は手がいっぱい」といった話が出たら、そのままメモ欄に書き、再連絡予定日を波の谷にあたる時期へ置いておくと、次の接触が自然になります。
重複と二重連絡を防ぐ仕組み
複数のリストや名刺を統合すると、同じ会社が別の行に入り込みます。溶接業では「本社と工場が別住所」「有限会社と株式会社で表記が揺れる」「屋号と法人名が違う」といったケースもあり、単純な社名一致では見抜けません。次の手順で事前に整理します。
- 会社名から「株式会社」「有限会社」「(株)」などの法人格表記と、全角半角・スペースを取り除いた照合用の名称列をつくる
- 電話番号からハイフンを除いた照合用の電話列をつくる
- 照合用電話列で重複を検索し、ヒットした行に印を付ける
- 照合用名称列でも同様に検索する
- 重複と判断した行は削除せず、「統合済」フラグを立てて非表示にする(履歴が消えないようにするため)
二重連絡の防止には、行動側のルールも要ります。
- 架電やメール送信の前に、必ず最終接触日と担当者列を確認する
- 接触したら、その場で最終接触日を更新する(後でまとめて入力しない)
- 同じ会社に別部署から連絡する場合は、メモ欄に「前回◯月に別件で接触済」と残す
- DM配信リストを書き出す際は、配信停止フラグと対象外ステータスを除外する条件を毎回同じ手順で適用する
チームで共有するためのルール
台帳が崩れる原因の多くは、ツールではなく運用ルールの曖昧さにあります。次の点を最初に紙一枚で決めておくと、後の手戻りが減ります。
- 編集権限:誰が行を追加でき、誰が閲覧のみかを決める
- 入力の締め:その日の活動はその日のうちに反映する
- 列の追加:勝手に列を足さない。追加したい場合は管理者に相談する
- フィルタの使い方:全員が同じ画面を見るため、個人用の絞り込み機能を使う
- バックアップ:週に一度、日付を付けた複製を残す
朝礼や週次ミーティングでは、次の三つの一覧を見るだけで十分に機能します。
- 次回アクション予定日が今日以前で未処理の行
- ステータスが「関心あり」の行
- 最終接触日から一定期間が過ぎた「保留・時期待ち」の行
すぐ使える運用チェックリストとメモの書き方
導入初週に確認したい項目をまとめます。
- 管理IDが全行に入っているか
- ステータスがすべて選択式になっているか
- 配信停止フラグの列が存在し、除外手順が決まっているか
- 照合用の名称列と電話列が作られているか
- 「次回アクション」と「次回アクション予定日」が空欄のまま放置されていないか
- 担当者が空欄の行がないか
メモ欄は自由記述にすると質がばらつきます。次の型を共有しておくと、後から読んだ人でも状況をつかめます。
メモ記入例:「◯月◯日 電話。工場長不在のため事務の方と会話。午前は現場に出ていることが多いとのこと。次回は夕方に架電。現在は既存の取引先で足りているが、繁忙期の外注先は探しているとの話あり。◯月頃に再連絡予定。」
このように「いつ・誰と・何を話し・次はどうするか」の四点が入っていれば、担当が変わっても引き継げます。逆に「不在」「また今度」だけのメモは、次の行動につながりません。
台帳は完璧に作り込むより、まず動かすことが大切です。列を絞って始め、実際に使いながら不足を足していく進め方であれば、日々の営業を止めずに整備できます。
まとめ
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